歯周病とは
歯周病は歯を支えている骨や歯肉の病気です。
家も土台がしっかりしていないと、いずれは倒壊してしまいます。歯周病は軽度のうちに治療を行わなければ、歯を支えている歯槽骨が溶けてなくなり、最終的には歯が抜け落ちてしまいます。
昔の歯周病治療は歯を抜くことが一般的な治療法でしたが、現在ではかなり治せるようになってきています。治療内容については歯周病の進行度合いによって異なります。
諦めず、大切な歯を一緒に守っていきましょう。
歯周病の症状
- お口の中がむずがゆく感じる
- 歯茎から血が出る
- 口臭がする
- 朝起きた時お口の中がネバネバする
- 歯と歯の隙間に食べ物が詰まりやすい
- 歯がグラグラして食べ物が噛みにくい
- 歯茎が腫れていて時々痛みを感じる
- 歯茎を指で押すと血や膿が出る
歯周病の進行
ステージ1:健康的な歯
- 歯茎が引き締まっている
- 歯茎がピンク色をしていて弾力がある
- ブラッシング時に出血しない
ステージ2:歯肉炎初期~中期
- 歯茎が引き締まっている
- 歯茎がところどころ赤くなっている
- ブラッシング時に血が出る
- 歯が浮いているような感覚がある
- 歯茎がかゆい
ステージ3:歯肉炎中期~重症
- 歯茎が時々腫れて痛みがある
- 歯茎から血や膿が出ることがある
- 口臭がしてきた
- 冷たい物で歯がしみる(知覚過敏)
ステージ4:歯肉炎重症
- 歯茎がブヨブヨして血や膿が出る
- 歯がグラグラ動く
- ひどい口臭がする
- 食べ物が噛みにくい
歯周病が与える怖い影響
歯周病は近年の研究で、日常生活の喫煙やストレス、糖尿病などの病気が関係し、誘発すると明らかになっています。歯周病が全身の健康に与える影響をご説明していきます。
心臓病
歯周病と心臓病には深い関わりがあります。研究によると歯周病原菌が心臓の血管をつまらせ、心臓の血管細胞を傷害することが明らかになっています。
動脈硬化症や大動脈瘤にかかった細胞を検査すると、歯周病関連菌が数多く検出されます。
糖尿病
糖尿病の患者様は高血糖になり、毛細血管がもろくなります。そのため、健康な方と比べると、毎日のお口のセルフケアを怠ると歯肉炎を起こしやすくなり、放置することで重度の歯周病になりやすいことが報告されています。
肺炎
厚生労働省の調査により、高齢者(65歳以上)の死因の第1位は肺炎と報告されていますが、肺炎の中でもお口の細菌が肺に入り込んで炎症を起こしてしまう肺炎のことを誤嚥性肺炎や嚥下性肺炎と言います。
高齢になると喉の筋力が低下するため、本来なら食道に入るはずのものが気管支に入ってしまうことがよくあります。誤嚥性肺炎を起こした患者様の肺からは、高確率で歯周病原因菌(嫌気性グラム陰性桿菌など)が発見されることから、肺炎と歯周病には強い関連性があると言われています。
骨粗しょう症
健康な方と骨粗しょう症の患者様を比べた場合、歯槽骨吸収(歯を支える骨の減少)が早く、歯周病の進行も早いという報告があります。
また、歯周病によって歯を失い噛む力が弱くなると、食事のバランスにも影響を与えるため体の骨密度が低下し、悪いサイクルに至りやすい傾向があります。
早産
一般的な妊婦さんと歯周病にかかっている妊婦さんを比べた場合、歯周病にかかっている妊婦さんは早産のリスクが高まることが報告されています。
歯周病が進行して歯茎の炎症がひどくなると、歯周組織のプロスタグランジンE2が増加します。プロスタグランジンE2は陣痛促進剤として使われているもので、子宮収縮、子宮頸部の拡張の作用があるため、早産を引き起こすと言われています。
アメリカでは早産と歯周病の関連性に関して多数の報告があり、早産だった妊婦さんのお口の中を調べると、重度の歯周病の方が多く、大量のプロスタグランジンE2が影響を与えていたと見られています。
バージャー病
バージャー病とは、手足の末端にある血管が詰まって炎症が起き、皮膚の痛みや潰瘍ができる病気です。
このバージャー病と歯周病には深い関連性があり、バージャー病にかかった方に関しては全員が歯周病と診断されており、歯周病の進行度合いは中度~重症でした。痛みや潰瘍のある部分の血液を採取して検査を行うと、血液からは歯周病菌が検出された一方で、正常な部分からは歯周病菌の検出はされませんでした。
歯周病菌は血栓をつくりやすく、表皮内部の細胞に侵入することが報告されています。歯周病菌がお口だけでなく全身にめぐり、最悪の場合バージャー病を引き起こすと見られています。
口腔内細菌数
[通常の状態]
20代女性
[施術を受けた状態]
20代女性
当院の歯周病治療
薬で治す歯周病
歯周内科治療とは、簡単にいうと「お口を除菌する治療」です。
除菌の方法は、モニターを用いた顕微鏡検査によってお口の中の細菌の種類や数などを調べ、その細菌に合ったお薬や歯みがき粉でお口の中をきれいに除菌していきます。
歯周病が進行していなくても、この除菌を行うことで今後の歯周病が進行しにくくなる効果があるため、最適な予防方法とも言えます。
歯周病の治療法
歯周病治療には大きく分けて4つのポイントがあります。
- 位相差顕微鏡による細菌の確認
- 細菌を除去する薬の内服
- カビを除去する薬あるいはカビ取り歯みがき粉での歯みがき
- 除菌後の歯石取り
特に1は大きなポイントです。位相差顕微鏡でお口の中に歯周病菌がいるか、カビが多いか、キレイな状態なのかを確認します。これは、位相差顕微鏡でしっかりと確認しないとお薬の選択ができないためです。
位相差顕微鏡検査について
位相差顕微鏡で歯垢を確認すると、ほとんどの方に歯周病菌やカビ菌が見られます。
お口の中に存在している歯周病菌やカビ菌を確認することでお薬の選択が可能になります。さらに位相差顕微鏡の動画像を拡大しながら分かりやすく説明していきます。歯科医療の現場では、患者様ご自身のお口の状態を知ってもらうために位相差顕微鏡を用いた検査が増えてきています。
お口の中や体の中には細菌がたくさん居ると頭の中では理解していても、実際に歯周病菌が動いている映像を目の当たりにするとかなりの衝撃を受けます!
歯周病菌がお口の中から居なくなると、お口のネバネバ感がなくなり、スッキリとします。7日で歯周病菌をほぼ全滅させられる治療法です。
歯周病治療について
歯科医療が日々向上し、最近では歯周組織再生治療により自分の歯を残しつつ、元の健康な状態に近づけるといったことが可能になってきています。
当院では、この最先端の治療法でもある歯周組織再生治療に取り組んでおり、今ある歯を歯周病の患者さんでも最大限残すことができるよう努めております。
実際に歯をどれだけ残せるかについては、まず位相差顕微鏡による細菌数の変化の確認を行います。この結果から、患者さんが将来どれほどの歯を残すことができるかの説明をし、そして薬による歯周病細菌の無菌化を目指していきます。
[通常の状態]
40代男性
[施術を受けた状態]
40代男性
歯を失わないために
予防歯科とは
一度削ったり、抜いたりしてしまった歯は二度と元には戻りません。
これは当たり前のように感じますが、残念ながら、理解をしていてもしっかりと口腔ケアを出来ている方はあまり多くはありません。
虫歯や歯周病をの一番の対策方法は予防をすることです。毎日のご自宅でのセルフケアに加え、定期的に歯科医院で検診やクリーニングを行うことで、虫歯や歯周病のリスクを大幅に減少させることが可能です。
予防の流れ
お口のトラブルを早期に見つけて治療を行えば、トータルでかかる治療期間や費用を大幅に削減することが出来ます。歯や歯茎に蓄積されるダメージも減るため、お口の健康をより長く保つことができ、将来的に歯を失うリスクも減らすことが出来ます。
口腔内の状態は、日常生活の変化などによって大きく変わります。定期的に検診を受け、お口の健康を維持していきましょう。歯のメンテナンスを行う際の基本的な流れは以下の4ステップとなります。
STEP1:歯周ポケットの検査・虫歯チェック
メンテナンスで欠かせないのが歯周ポケットの検査です。
この検査では、歯と歯茎の境目にある溝(歯周ポケット)の深さを調べる検査です。歯周病が進むと歯周ポケットは深くなっていくため、この検査を行うことで歯周病がどの程度進行しているのかを把握することができます。
歯周ポケットの検査を行う際、「歯茎からの出血」がみられる方がいらっしゃいます。これは「歯肉炎」という状態で、歯茎が炎症を起こして腫れてしまうことで出血しやすい状態になっています。
歯周病が進行していると、
- 口臭がきつくなる
- 歯が長くなる
- 歯がグラグラする
といった症状が出るようになります。
STEP2:ブラッシングや悪習慣の指導
日頃の歯の基本的なメンテナンスとなる「歯みがき」は、虫歯や歯周病の予防には欠かせない習慣です。
染め出し液を歯に塗布して細菌がいる部分を染め出し、丁寧に歯みがきが出来ているかをチェックします。また、悪習慣の見直しも積極的に行いましょう。
STEP3:歯石や着色の除去
毎日丁寧に歯みがきをしていれば、歯に付着した歯垢(プラーク)は落とすことが出来ます。 しかし、セルフケアを怠り、歯垢が歯石(歯垢が石灰化したもの)になると、歯みがきだけでは除去することが出来ません。
歯石は表面が軽石のようにザラザラしているため、汚れが付着しやすくなってしまいます。
当院では、専用機器を使って丁寧に歯のクリーニングを行い、歯石もしっかりと除去します。歯石は歯周病の大きな要因となりますので、早めに除去して、歯を清潔な状態でキープするようにしましょう。歯石は歯にこびりついて歯ブラシでは落とすことが出来ないため、専門家に除去してもらう必要があります。超音波の機械を使い、歯石を取り除きます。
歯みがきで落としきれない着色汚れは、エアフローという専用機器を使って汚れを落とします。歯みがきはでは磨ききれない歯と歯の隙間についた着色も落とすことが出来ます。
STEP4:仕上げ磨き(バイオフィルムの除去)
お口の中を清潔に保って虫歯や歯周病を予防し、しっかり噛んで飲み込むことは、お口の中の細菌を減少させます。
ただし、正しく歯みがきをしていても歯と歯の間などには落としきれない汚れが残ってしまうため要注意です。歯科医院では、こういった汚れまでも専用機器を使って徹底的に除去することが出来ます。
定期的にクリーニングを受けることで、汚れが付着しやすい部分や、虫歯になりやすい部分を把握できると共に、虫歯や歯周病の早期発見や予防にも役立ちます。